異色

16日、1年早明戦。前半42分、セットアタックからパスを受け、相手タックルを外して追撃のトライを上げたのが
CTB小沼宏太選手。

「(ディフェンスの)面が揃っていたのですけど相手の間隔があまり狭くなかったので、(相手を)ずらしてヒットしに
いけば抜けると思っていました。前に出ることしか考えていなかったです。」

BK陣にタレントを揃える1年生チームではWTBでの出場が続いたものの長田智希選手、河瀬諒介選手が急遽、
U20日本代表に招集されたため、この日は本職のCTBでの起用。

「フルメンバーでやりたかったので、正直(招集は)残念なところだったのですけど、自分は(同じCTBの)長田を
越えられるように、引けをとらないように…と思い切りやろうと思っていました。」

トライの前にはディフェンスでも出足良く相手に突き刺さるハードタックル、大駒2枚を欠いたBK陣の中で攻守に
見せ場を作ります。ラグビーを始めたのは3歳の時、茨城の強豪・清真学園高校時代はSO/CTBとして活躍した
ものの、1年間の浪人生活を経た2017年春、ラグビー部にはトレーナーとして入部します。

「(昨年度は)一浪して大学に入って、体力的にも新人練がキツいというのは分かっていたので、厳しいなと思って
最初は(プレーヤーを)あきらめたのですけど…。」

トレーナーとしてグラウンドレベルでチームをサポート、間近でプレーヤーを支えながらも徐々にこみ上げてきたのは
もう一度戦いたいという気持ちでした。

「トレーナーって、選手をサポートすることは出来ても、強くすることはできないので…。トレーナーが頑張っても選手が
タックルをする訳ではないですし、自分が直接グラウンドに立って相手を倒したいなと思いました。」

芽生える気持ちが一気に強くなったのは昨夏の菅平での帝京大戦(0-82で敗戦)、目の前で次々とゴールラインを
駆け抜ける大学王者の姿を見て、自分の力で帝京大を倒したいとプレーヤー転向を決意します。

「トレーナーの仕事は、合間の時間がそんなにある訳ではないので、(昨年度の)チームが終わるまではしっかり
トレーナーに専念して、シーズンが終わってから切り換えようと自分の中では思っていました。」

と昨年12月の大学選手権・東海大戦までトレーナーの仕事を務め上げると、1月から復帰に向けて体作りを開始、
この春、新人練を受ける直前に同級生(現2年生)に思いを伝えます。

「秋あたりから仲良いヤツには何人か言ってあったのですけど、ちゃんと皆に説明した訳ではなかったので…。
『今の代のトレーナーを辞めて選手を目指します』という話をしました。一人で黙々とトレーニングをやっていたの
ですけど、色んな人が見てくれていたみたいで皆、頑張れ…と言ってくれて励ましてくれました。」

受け直しの新人練を経て、今春晴れてプレーヤーとして再入部を果たします。大学入学までに一浪、プレーヤー復帰
までに一浪、照れ臭そうに笑います。

「今の3年生が高校の同期で、2年生がラグビー部で最初の同期。『4年生までみんなタメでいいんじゃない?!』と
イジられます(苦笑)。色んな人と分け隔てなく喋れているこの状況を今はすごく感謝しています。」

180cm85kgのBKとしては恵まれた体格、自身もアピールポイントをコンタクトの強さと言葉に力を込めます。

「アタックでもディフェンスでも信頼を得るところはコンタクトの部分だと思っています。アタックではボールを持ったら
しっかり仕掛けて前に出る。ディフェンスでは僕が立ったら、抜かれない…という信頼を得られるようにそこでアピール
したいですね。器用さというよりも相手を倒すところを見せたいです。」

昨年度のトレーナー経験を生かして、試合に臨む前に巻くテーピングも自分自身で。

「今日(テーピングを)巻いていた指もそうなんですけど、どこが痛くて、何で痛いのかは自分で分かります。痛めた時も、
どこが痛いのか少しは分かるので、軽いテーピングだったら、トレーナーに迷惑をかけないで自分でやっていきたいです。」

一浪、トレーナー経験ありと紆余曲折を経てのプレーヤー復帰。異色の経歴を持つ小沼選手の新たなチャレンジに
注目です。【鳥越裕貴】



前半42分、タックルを外してトライをあげるCTB小沼宏太選手。課題はディフェンス面。「内側からいくディフェンス、
正面に立ったディフェンスはそんなに不得意じゃないのですけど、余られている状況で流しながら行かないと
いけない時にどうしても引き付けられて…外へ行こうと思った瞬間に内を切られているとかディフェンスの難しさを
感じています。」

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