黙々

3日、早明戦。豊富な運動量でメイジ重戦車に何度も何度もタックルで刺さり続けたのは
4年生WTB野口祐樹選手。試合を振り返ります。

「体を当てる部分はチームとしても個人としても負けていなかったかなというのはあります。
ただその中でプレー精度は明治大学さんの方が高くて、ワセダはミスしてしまった…。」

中隆彰選手、荻野岳志選手、本田宗詩選手…ワセダの歴代のフィニッシャーが受け継いで
きた右WTB、今季の背番号14はディフェンスではBKラインの一番内側を任されて中盤で170cm
という小さな体を当て続けます。

「CTB2枚(中野将伍選手、黒木健人選手)はどうしても動かせないメンバーなので、WTB
なのかなと。首脳陣からはディフェンスの時は前にいて良いと言われています。足も速く
ないですし、アタックはあまり求められてないと思います。背番号は驚きましたけど
ディフェンスの部分でやる事は変わらないです。」

群馬・太田高校時代は主将として創部105年目で花園初出場、母校の歴史を作った事での
達成感が大きく、2013年度の新人練習に参加するものの部を去ります。

「花園でプレー出来て、それで結構自分で満足しちゃっていました。大学は程々で良いかな
と思った状態のまま新人練いっちゃって…。そんな気持ちじゃ全然…跳ね返されて…。
今思えばキツいから逃げたのでしょうね…。」

ラグビーサークルに入り、普通の大学生として過ごしていた1年生の12月、そのサークル
仲間と観戦に訪れた一つの試合が野口選手の気持ちを動かします。

「最後の国立の早明戦。大観衆の中で選手の1プレー、1プレーですごい盛り上がっていて、
そういう姿がほんとに羨ましくて…。サークルでやっていたら、そういうのは味わえない…
2年入部している人もいるという話も聞いたので、やれるならやろうかなと思いました。」

再び上井草での新人練習に参加し、2年入部が認められると下のチームで地道な努力を継続、
昨年SOからCTBへのコンバートを機にディフェンスでの活躍機会が増えて、頭角を現すと
最終学年でAチームメンバー入り、LO加藤広人主将も信頼を寄せます。

「痛いことを黙々と出来る選手。ディフェンスでも体を張りますし、そういう部分は尊敬
できる。内に秘めているものは誰よりも熱いものがあると思うので、頼りになります。」

試合に出られない4年生も寄せ書きにその思いを託し、そして早明戦試合前日にはメイジの
ジャージを着せたタックルダミーを4年生自ら持って、最後のエールに変えます。

「(同期の言葉は)どの言葉も響くのですけど、一番響いたのはケガで選手ができなくて
スタッフになった吉満君が”オレの4年間はお前に任せた”と…。そういうのを聞くと、
やっぱり自分も感傷的になってしまうタイプなので…。」

下のチームからの叩き上げの選手の代表として、試合に出られない選手の思いも背負っての
戦いが続きます。

「ずっと下でやっていて、最終学年にチャンスをもらって…。明治大学さんとかは高校の
時からのスター選手がいっぱいいる…高校の時はすごい差があったけど、今大学4年になって
互角に戦えるのは下積み時代があったからだと思ってますし、自信になりました。中野厳で
あり、僕であり、試合に出られていない4年生も…(その下積みが)無駄ではないという事を
本当は勝って証明したかった。」

努力の正当性の証明は大学日本一で。初戦は東海大学と激突、「東海さんもデカイのでまずは
個人としては引かないこと、必ず前で止め続ける」…背番号14が大学選手権でも、一の矢と
なって黙々と相手の足元に突き刺さります。【鳥越裕貴】



前半、ディフェンスラインにセットするWTB野口祐樹選手。2年入部のきっかけとなった早明戦での
プレーに「観衆、歓声が他の試合と全然違って、これが早明戦…いい経験になりました。4年前の
(国立で憧れた)グラウンドでの気持ちというのを今年最後味わえたのは良かった。」

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