強気

23日、伝統の早慶戦。1年生FB古賀由教選手が前半で負傷、交替で入ったのは対抗戦初出場の4年生
中野厳選手。記者会見、そのパフォーマンスについて聞かれた山下大悟監督は

「去年まで積み上げてきたものが4年生になって花開いた。非常に集中力のあるプレーをしていましたし、
今日は本当に良かったですね。さすが4年生、今日はもう抜群に良かったと思います!」

ところどころ言葉にアクセントをつけて、最大級の賛辞を送ります。リザーブメンバー入りが決まったのは
火曜日の事、その選出理由を指揮官は続けます。

「ビッグゲームなので早めにBKの選手がケガしてしまうんじゃないかなと…そういうことが想定されたので、
やっぱりディフェンスとトータルでしっかりゲームを作れるプレーヤーを23番にという事で。」

と選んだ側が話せば、選ばれた側の中野厳選手は

「メンバーがケガがちだったので、もしかしたらあるかなとは思ったのですけど、他にも(桑山)淳生、(桑山)
聖生だったり、能力の高い人が居て…。その中で自分が選ばれたという事はそれに恥じないプレーをしなきゃ
と思いました。」

3年生まではジュニアチームが主戦場、長い下積みを経て4年生の春シーズンにAチームに定着するものの
夏場以降調子を落とします。

「春の慶應戦、帝京戦といいプレーが出来た時の感覚がジュニア選手権期間中、全然戻ってきていなくて…。
夏に帝京にボロ負けして以降、個人的にもいいイメージでプレーできていなかったです…。」

幼い頃に早大OBの父親に観戦に連れられてきて以降、強い憧れを抱いていたワセダラグビー…
難関・開成中学に合格しながらも、毎年東大合格者数No.1の開成高校への進学ではなく選んだのは子供の
頃からの夢でした。「どのチームに居てもアカクロへの思いがブレる事はなかった」と真っ直ぐにアカクロ、
そしてその先の日本一だけを見据えてきた中野厳選手が4年目で掴んだ対抗戦デビューは、伝統の早慶戦。

「最近、練習で体が動けるようになってきた感覚があった中で、運とかもあってメンバー入りできた。勝負を
かけるしかないなと。(早慶戦は)憧れの舞台、感動といいますか、何て言うのですかね…圧倒された感じ
ですね。でも校歌を歌うと引き締まる思いがあるのでそれでスイッチ入れられたかなと思います。」

キック中心のゲームとなった前半を終えて、アグレッシブに攻め立てる事に意思統一した後半からの投入、
ビッグゲーム前に行われる伝統の寄せ書きの儀式で書き込んだ「潰」という文字に込めた決意そのままに
積極的な仕掛けでチームに流れを呼び込みます。

「監督も仰ってましたが、勝ちたいとかはいらない、勝たなきゃいけないんだと…。そういう意味でも
強く相手を叩きのめすという気持ちで『潰す』と書きましたし、強気で挑めたことに関しては良かったと思
います。積極的に仕掛けてライン全体を前に出せればと意識してやっていましたし、一発目行って、
抜いてはいないですけどゲインできているな…という感じだったので、そのままのいいイメージで何本か
走れたかなと思います。」

来年は一般企業へ就職予定、ラグビーは今年で最後と決めています。4年生の最終盤になって再び巡って
来たチャンス、春に掴みかけて逃してしまったアカクロジャージをもう手放すつもりはありません。

「強気に行っていれば通用する部分はあるという手応えを掴めたので、これを継続する事です。春は
継続できなかったので、そこの気持ちを最後まで。一人でも多くメンバーに4年生が入った方がチームの
力になると思うので、チームの競争をあげる意味でも練習から一つ一つ頑張っていこうと思います。」

言葉を空けて、練習の大事さをもう一度繰り返します。

「ここからまた勝負で…練習ですね。練習が試合に全部出ると思うので、練習からしっかり集中して
やっていきたいと思います。」

上井草の日常の積み重ねで掴んだ夢舞台、夢の続きを追いかけて再び上井草での日常に戻ります。
【鳥越裕貴】



後半、中央スペースに顔を出して突破を試みるFB中野厳選手。試合前、出場できないメンバーから
の寄せ書きを眺めて「ずっと一緒に下のチームでやっていた人が”期待している”、”応援している”
と…。その言葉だけで頑張ろうと思いました。」

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