引退

16日、全早慶明。現役引退試合となったWTB首藤甲子郎選手(2006年度卒、NEC)が試合を
終えて場内を一周すると、両手一杯に花束やプレゼントを渡されます。

「感無量ですね。引退試合ができるって、なかなかないですから。そういう舞台を用意して
頂けた事に温かみを感じますね。この大学は、自分を作ってくださった学校なので、そこの
ジャージをまた着せてもらえた事、山下監督もキャプテンをさせてくれたりだとか、極力
長い時間、最後の瞬間までグラウンドで出させてくれようとした気持ちも嬉しかったです。」

最大の見せ場は全明治戦の前半23分。スクラムからの一次攻撃でブラインドサイドから顔を
出すと高校(桐蔭学園)の後輩SO横山陽介選手のパスを受けて一気にインゴールに飛び込みます。

「(現役学生が)もらったら行っていいですよ…と言ってくれて…。パスは考えていませんでした。
まぁ、もともとパスできないのですけど(笑)。今日は両親が見に来てくれていて、恩返しというか、
そういう形で出来たので満足しています。」

大学1年生の春、NZU戦で鮮烈デビューを飾ってから常にワセダの中心選手。2年、3年生時は
大学選手権連覇に貢献、3年生時、トヨタ自動車を破る歴史的勝利もピッチの中で。
ワセダ黄金時代の背番号11、数ある思い出の中から一番印象に残っているシーンを聞くと

「試合とかそういうのよりも寮生活であったり、みんなが練習後に残ってナイター照明の下で
地道に努力している姿とかそういうのが印象に残ってますね。試合でいえば負けちゃいましたけど
(4年時の大学選手権)決勝のトライですかね。本当にみんなの為に走ろうと初めて思ったの
ですよね…それがすごく自分の力以上のものを出させてくれた…非常に覚えていますね。」

163cmの小さな体でありながら、柔道で鍛えた足腰の強さを生かした力強いランに加えて、
「それしか技がないので…」と謙遜するものの独特の間合いからハンドオフで抜き去る技術は
一級品。この日同じフィールドで一緒にプレーした164cmの原田季郎選手(2012年度卒。現キャノン)
はその姿を目標にしていたと話します。

「甲子郎さんは大学時代からこういうプレーヤーになりたいと目指していた選手でした。今日も
すごくいいプレーをしてくださっていたので、改めて凄い存在だなと実感した一日でした。体が
小さいからこそできるプレーがあり、小さいからといってナメられてはいけないプレーがあると
思うのですけど、そういうのを教わったところはありますね。ボールを持って行く時に(相手に)
抱えられないように低く当たったりするところも全部お手本にしてました。甲子郎さんも気にして
くれてステップの間合いだったり、僕が大学時代の時に教わりました。尊敬する先輩です。」
(原田季郎選手)

小さな体で駆け抜けたラグビー人生、伝統的に他校に比べてサイズに劣るワセダの現役学生
にもエールを送ります。

「気持ちだと思います。常に向上心持ってやってもらいたいなと…それだけですね。」

今後は自分を育ててくれたラグビー界、スポーツ界へ恩返しを行いたいと言葉に力を込めます。

「チャレンジすることはやめたくないですし、ラグビー界、スポーツ界にプラスになるように
色々勉強していきたいです。パーソナルトレーナーとかそういうところに興味があるので、
その勉強、スキルを身に付けたりいろいろやっていきたいです。」

大男達に立ち向かい続けた強い気持ちそのままに新たなチャレンジに足を踏み出します。
【鳥越裕貴】



全明治戦、前半23分現役引退を飾る独走トライをあげるWTB首藤甲子郎選手。同じく引退試合
となった同期のWTB菅野朋幸選手とのプレーに「両WTBで、一緒に出れたのは最高でした。
切磋琢磨しあって、ライバルであり仲間です。」

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